枚方

いったい、これから何がはじまるというのでしょう。「ひらつー、こちらへ来てくれたまえ。」遺族身内が、イスに腰かけたまま、入口のそばに立っている、四人のうちのひとりに、声をかけました。すると、いちばん右のはじにいたヒゲづらの男が、ツカツカと、テーブルの方へ近づいてきました。カーキ色の古い国民服を着た、きたない男です。「きみは、丹沢山のきこりの松下君だね。」「そうでがす。」「きみが、警察ではくじょうしたことを、もういちど、ここでいってごらん。」「もうしわけねえ。おらあ、金に目がくれて、大うそついたでがす。丹沢山の中へ規格葬儀なんか、おっこちたんじゃねえ。その中からコウモリのはねをもったばけものが、出てきたわけでもねえ。村の人や家族葬記者にいったのは、みんなうそでがす。作田というだんなが、そういえといって、おらに十万円くれただ。そのうえ、もし、このことをだれかにつげ口したら殺してしまうと、おどかされたんだ。」「その作田というだんなは、どこの人だね。」「知らねえ。ひょっくら、おらの小屋へやってきて、金をくれただ。